原因不明の崩壊神話

02.減価償却


 タウ(偽名)の食事は三日一食。だから彼は3日に1回街まで等価交換をしに出かける。街ではいつも同じ店――街で唯一の知り合いだと彼が語るアミク(これも偽名)が経営している――で利益と税金込みの等価交換をする。つまり彼にとってこの行為は自らの利得をすり減らす交換に他ならないが、違う手段を与えられていないタウには損だとわかっていながら交換に応じるしかない。
 ただ、タウが他者と違うところといえば、恩師がその命の花を散らすときに、保険金込みでタウの生活に必要十分な財産を残していたことで、それのおかげでタウは必要十分な生活ができる。それゆえ、タウは恩師と呼ぶ。
 街は荒廃していて、犯罪で溢れている。それは、自らが(非)等価交換によって失った利益を回復させるために必要なことで、弱肉強食という標語のもと、日々生存競争が行われている。
 そんな空間だから、
「こんな場所はすぐ去るに限るね」
というアミクの言葉を合図に、タウはいつも逃げるように街から離脱する。全く、心臓に悪い。



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