「咲かない桜」 桜が開花していた。1本に数個の花だけど、それでも、春の訪れを知らせるには十分。あと10日もすれば、満開になるだろう。推測だけど。 僕は満足だった。3年間通った学校を卒業して、無事進路も決まって、これから数年間の新たな生活を夢見ていた。 だからだろう。浮かれていたんだろう。油断したんだろう。僕は――。 3月13日のことだった。――卒業式。 泣いてる人がいた。笑っている人もいた。どっちでもない人も、いた。 「どうした、そんなつまらなそうな顔して」 友人は述べる。僕は聞き流すように答える。 「いつ始まるんだ? この式は」 校長以下みんな談笑という名のおしゃべりに興じている。そのおかげで(そのせいで)、9時30分開始予定のはずが、すでに10時を過ぎていた。 「それもそうだな。談笑なら終わった後ですればいい」 僕は聞き流す。 結局、卒業式は1時間20分遅れで始まった。 「で、これは何?」 「祝賀パーティーだね」 「へぇ」 目の前には高級そうな料理。×10。へぇ、こんなんあるんだ。食べたことないや。というか、これのお金ってどこから出てるんだろう? 「OBとかOGが出してくれてるらしいから、心配しなくていいみたいだよ」 「そうか。どうやって人の心を読んだ」 「気にするな。はっはっは。」 「気になる。だけどもういいやめんどい」 ここまで来てもおしゃべりは続く。たぶん解散は夕方になるんだろうな、とか考えながら、OBとOGの奢りの昼食をのんびり胃に収めた。 3月14日のことだった。――合格発表。 昼過ぎ、掲示板の前に立つ。たぶん合格しているんだろうなという自信を添えて。もっと早く来ていれば、受かった落ちたの動乱を目の当たりにできたかもしれないけど、興味がないのでパス。 落ち着いて、掲示板を確認する。 「よし、あった」 騒がずに、独り、確認を終えた。 桜が、10輪くらいに増えていた。 余談だが、1か月前に何ももらっていないので、お返しは無し。 3月15日のことだった。――――。 ――桜の花びらが、すべて、散っていた。 入学準備。面倒だけど、やらなきゃどうしようもない。だから必要最低限の準備をして、出掛ける。 目的地までの途中、信号待ち。そして、赤い電灯が消え、青に変わる。僕は足を踏み出した。 違和感。何がおかしい? ……ほかの人が、信号待ちをしていた人が、誰も、誰一人も動いていない。これはおかしい。さすがにおかしい。何故? 僕は横断歩道の第一四分点。皆は端点。 クラクションの音。頭だけ右方を向く。そうか。 ――トラックが、猛スピードですぐそこまで迫っている――。 信号無視。理解した。だけど、理解が遅かった。いくら学校の勉強なんかの理解ができたって、こういうことの理解ができなければ意味がない。なぜならば、きっと僕に明日はないんだから――――。 <あとがきに類する何か。> [任意の挨拶を代入]。 今回は忍者サイトマスターの、コミュ「物書きの集い」のお題「未来」×コミュ「小説書いてます」のお題「春」でお送りします。 ああ、早いところサイトを見やすくせねば……。 2011/03/26 | |
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